日記 猫の足音

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2004年05月24日

パン子さん

祖母には若い頃、
“パン子”というあだ名があった。
当時はまだ日本にパン屋は少なかった。
パン子さんはとにかくパンが好きで、
パン屋の前は素通りできないのだ。

祖父はそれほどパン好きではなかったが、
一時期パン屋を経営した。
きっと祖母が喜ぶと思ったのだろう。
“ピーターパン”というパン屋。

その頃、小学生だった私は楽しかった。
遊びに行き、パン生地を少しもらい、
ウサギの顔のパンを作り焼いてもらった。
パン屋の社長夫人となったパン子さんは
人手が足りなくなると店に行き、
サンドイッチを作った。
そのサンドイッチはよく売れたらしい。
しかし経営は難しく、
そんなに長くは続かなかった。

その後祖母の家でみんなが集まったりすると、
よく一緒にサンドイッチを山ほどこしらえた。
私は祖母の作る鮭缶入りのサンドイッチが
大好きだ。

パン好きは遺伝する。
祖母は大きめのイギリスパンが好き。
母は砂糖がかかった甘いパンが好き。
私は基本中の基本、角食パンが好き。
遺伝ではないが、
チビトム(猫)も黒糖パンが好き。
みんなパン子さんなのだ。

今は美味しいパン屋がどこの街にもある。
祖母はパン屋に行くと、
店内をうきうきと歩き回る。
もうちょっとでスキップしそうな勢いだ。
そして一人暮らしとは思えないほど、
たくさんのパンを買う。

もしも若き日のパン子さんを連れてきたら、
どんな顔をするのだろう。
本当にスキップしてしまうかもしれない。

投稿者 mamiko : 23:16