日記 猫の足音

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2011年02月14日

最終回、締めは猫で

東京新聞・中日新聞の平田俊子さんのコラム
「短大で詩を教える」
先週火曜日に掲載された5回目の挿絵は、
「まつおかさんの家」という詩が出て来たので、
その詩をテーマに描きました。
隙あらば?猫を紛れ込ませようとする私です。

Tandaide_5.jpg
まつおかさんの家
 
ランドセルしょった
六歳のぼく
学校へ行くとき
いつもまつおかさんちの前で
泣きたくなった
うちから 四軒さきの
小さな小さな家だったが
いつも そこから
ひきかえしたくなった
がまんして 泣かないで
学校へは行ったのだが
 
ランドセルしょった
六歳の弟
ぶかぶかの帽子かぶって
学校へ行くのを
窓から見ていた
ぼくは中学生だった
弟は
うつむいてのろのろ
歩いていたが
いきなり 大声で
泣きだした
まつおかさんちの前だった
 
ときどき
未知の場所へ
行こうとするとき
いつでも ぼくに
まつおかさんちがある
こころぼそさと かなしみが
いちどきに あふれてくる
ぼくは べつだん泣いたって
かまわないのだが
叫んだって いっこうに
かまわないのだがと
かんがえながら 黙って
とおりすぎる

(辻征夫 詩集『かぜのひきかた』から)

投稿者 mamiko : 22:44