日記 猫の足音

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2004年04月08日

しっぽ

「しっぽが欲しい」と夫が言った。
どんなしっぽかと聞くと
かっこいい人間用のしっぽだという。
えー、肌色なの?気持ち悪い。
じゃあ、私はシマリスのしっぽがいい。
フワフワでお布団代わりにできるやつ。
冬はしっぽを巻き付け温まり、
夏はしっぽでパタパタ扇ぐのだ。

子供の頃に家族4人でどこかの縁日に行った。
夜店にはいろんなオモチャや雑貨が並ぶ。
「あれが欲しい」
妹が目を輝かせて立ち止まった。
動物のしっぽをキーホルダーに仕立てた物だった。
しっぽは実物大くらいの大きさなので、
キーホルダーというより
鞄や服の腰辺りに付けるアクセサリーだ。
フェイクファーなどではなくて、
本毛皮のフサフサしたしっぽが並んでいた。

妹が指さしたのは、
茶色と黒の縞々のしっぽだった。
両親はどれどれと一緒に立ち止まる。
父が買ってあげようと財布を出した。
キーホルダーとしては少し高かったと思う。
そこで、店のおじさんが言った。
「これねぇ、子狸。捕まえるの、結構大変なんだよ」

その言葉を聞いた途端、
私の頭の中に子狸が飛び込んできた。
子狸はすばしっこく頭の中を駆け回る。
いや、逃げ回っているのだ。
一生懸命逃げて仲間達の所へ帰ろうと必死だ。
しかしそこへ猟師が現れて、
とうとう子狸は捕まってしまった。
そして容赦のない猟師は、
子狸のしっぽを根元から切り取った。
「キュインッ!」
子狸は飛び上がって猟師の手をすり抜け、
また逃げ出した。

もうダメである。
父が私にもお揃いのしっぽキーホルダーを
買ってくれようとどれが良いか聞こうとしたが、
私の目からは涙が止まらない。
自分がその子狸になってしまったように
悲しい気持ちになった。
大事なしっぽがもう無い…。
しっぽを切られた子狸が
頭の中を泣きながら駆け回る。

妹はご機嫌で、
しっぽをプラプラさせながら帰った。
私はメソメソ泣きながら帰った。
両親はとても複雑な顔をしていた。
しばらくの間、可哀想な子狸は、
私の頭の中を駆け回っていた。

きっと人間は羨ましいのだ。
人間にしっぽが付いていたら、
ファッションの幅がぐんと増えそうだ。
服には皆しっぽ用の穴が空いているのだ。
ミシンにはしっぽホールステッチ機能が
ついているだろうし、
冬場は手袋のようにしっぽカバーが、
オシャレのポイントになる。
しっぽリング、しっぽピアスなど、
アクセサリーもあるだろう。
しっぽで挨拶をしたり、
愛の告白をする国なんかもあるかもしれない。

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注意:写真は狸ではなく、コゲ(愛猫)のしっぽ。

投稿者 mamiko : 23:01