日記 猫の足音

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2005年08月02日

「廃線路」

suiri05_09.jpg
小説推理9月号(双葉社)表紙

小学生の頃、
決まって夏に虫歯が痛くなった。
国立に母の友人の歯医者さんがいて、
ちょっと駅から遠いのだけれど、
よくそこまで通った。
国立駅北口から立川方向へ線路沿いに歩く。
しばらく行くと、
小さい踏み切りと引き込み線の線路が現れる。
その頃すでに、
使われていない廃線路だった。
そこを通るのが近道だった。

猫じゃらしを揺らして
向日葵の咲く家や栗林を抜け、
真夏の線路道を急いだ。
帰りは治療が終わっているので
足取りもかなり軽く、
私は枕木から次の枕木へ
ぴょんぴょん跳びながら帰った。
今はもう、
線路も枕木も取り除かれてしまった。

投稿者 mamiko : 01:22

2005年07月15日

夢を見た

2ヶ月前に亡くなった祖母が、
生き返るという夢をみた。
リアルにも葬儀の準備中という設定。

生き返った祖母は、
死んでいたとは思えないほど元気で、
皆が驚く中で起き上がり、
わーと泣きながら抱きあった。
祖母は立ち上がりちょっとよろけたが、
すぐにしっかり歩いた。
その後に場面は変わって、
駅の階段を手をつないで降りていた。
私は、亡くなったことを知らせたところに
どう説明しようかと考えていた。

目覚めてからもしばらくは現実に戻れず、
どうしようかと悩んでいた。
つないだ手の感触が残っている気がした。

何かの啓示だろうか…。
それとも「いま、会いにゆきます」の
ドラマを見たからか?

投稿者 mamiko : 00:30

2005年05月30日

レザーのおサイフ

秋山祐子さんの作品に出会ったのは、
原宿の手作りアート雑貨店。
私はコルク人形の仕事が
一つ入ったくらいの頃だった。
自費出版の本とポストカードを
そこの店に置いてもらって、
おまけに週に2回の店番もしていた。
祐子さんも同じで、
革のがま口やポーチを置いてもらい、
私とは別の曜日に店番をしていた。
それ以来、お互いの展覧会に足を運ぶ仲。
仕事の場は違えど、年齢も同じで、
スタート地点が一緒な気がする。

祐子さんの作品は植物や小鳥などが
モチーフになっていて、とてもステキ。
裏地は可愛いプリント布で、
とてもキレイな作りなのだ。
おサイフは3つ持っていて、
季節ごとに取り換えて使っている。

作れそうで作れない彼女の小物たち。
ステキなハウツー本が出版された。
作ってみたいけれど、今は眺めるだけ。
akiyamayuko.jpg
文化出版局・1,575円

投稿者 mamiko : 18:44

2005年05月17日

火曜日は、おばあちゃんちの日

いろいろと重なるものだ。
チビトム(猫)が他界して4日目の朝、
祖母が逝きました。
39.2度の熱を出した次の日。
熱は、お通夜の晩まで出ていた。
祖母のことも、チビトムのことも
わかっていたことなのでショックはありません。
あまり苦しまないでほしかったし、
そろそろだろうと覚悟もできていた。
葬儀などで忙しく、全く寝込めなかったので、
風邪はまだ治りません。

毎週火曜日は、「おばあちゃんちの日」だった。
美術学生の頃は、土曜日が休日だったので土曜日。
ここ数年は火曜日だった。
ずっと、週に一度は祖母宅の日と決まっていた。
学生の頃は、祖母宅に私の部屋を作り、
絵を描いて、たまに頼まれた用事をしていた。
その頃は祖父も生きていて、
よくシャツのボタン付けを頼まれた。

祖母の老化に伴い、用事がどんどん増えた。
泊まっても絵を描く時間はなくなり、
掃除や買い物、外出の付き添いの日となった。
鍋が焦げていたり、ガラスの破片が落ちていたり、
冷蔵庫の中がベタベタになっていたり…。
私が30歳くらいの頃だったか、少し辛くなり、
毎週祖母宅の前夜に蕁麻疹が出て困った。
少し気楽に手伝おうと肩の力が抜けた頃、
蕁麻疹もでなくなった。
耳が遠いのでテレビの音量がだいぶ大きくなって、
私の耳もかなり疲れた。
けれども、そのおかげで
蚊の鳴くような声だった私は、
大きな声ではっきり話せるようになった。

OLをしていた頃は、
なかなか週に一度は行けなかったけれど、
勤め先の銀座で、時々祖母とデートした。
デパ地下のベンチで待っていてと約束をして、
私は夕方仕事を終え、
急ぎ足でデパートの階段を下りて行く。
必ず早く来て座っていた祖母が、
「まみちゃんは内股で下りてくるからすぐわかる」
と笑っていた。
銀座のライオンで生ビールで乾杯し、
フレンチフライドポテトを食べる。
最後にライオンに行ったのは、今年の1月の初め。
足が弱くなり外出もタクシーが増えた。
「鳩居堂」までタクシーで行って、
祖母は便箋、私は個展用の芳名帳を買った後、
ゆっくり歩行者天国をライオンまで歩いた。
生ビールは中ジョッキを2つ頼むのだけど、
私はそんなに飲めないから、
祖母のジョッキが空になったらジョッキを交換する。
冷えてる方が好きなので、ビールにも氷を入れる。
そのやり取りは、相変わらずだった。

そうやって祖母と2人で、
ずいぶんいろんなところに行った。
時々、横浜に泊まりに行った。
元町商店街を練り歩き買い物して、
「ホテル・ザ・ヨコハマ」に泊まる。
夜はカクテル“赤い靴”を飲む。
新宿の「時屋」では、うどんと甘味。
毎年雛祭りの前は、
小田急ハルクの地下で「虎屋」の箱菓子を買い、
「千疋屋フルーツパーラー」へ。
渋谷は東急本店に行き、買い物を済ませたら、
レストラン街の「揚州飯店」へ。
前菜からデザートまでお腹いっぱい食べて、
おみやげに大きな中華まんじゅうを買う。
成城へ用事で行ったときは、
「櫻子」で和風弁当や甘味を食べ、
成城石井(高級スーパーマーケット)で買い物をして、
「アルプス」でケーキセット。
あちこちに、祖母のお気に入りの店があり、
お決まりのコースがあった。

今日は祖母のいない
初めての火曜日(おばあちゃんちの日)。
けれども思い出の場所が、
あまりにたくさんあり過ぎて、
どこに行っても祖母とすぐ会える気がする。

投稿者 mamiko : 05:04

2005年02月17日

湯沢にて

今週初めにスキー旅行に行ってきた。
本当はそんな暇はない筈なのだが、
年に1度なので許して欲しい。
朝まで仕事をして出かけたので、
睡眠時間2時間だったけれど、
お天気も景色もよくて、元気に運動。
消費したカロリーは、
スキー場でホットケーキやクレープを食べ、
すぐに取り戻す。

yuzawa.jpg

雪国育ちではないが、
祖母も両親も若い頃からスキーをたしなむ。
私が赤ん坊の頃は父の背中におんぶされ、
吹雪の中、転ぶと泣きわめいたという。
(当たり前だ!)
スキーを初めて履いたのは2歳。
赤い木製のスキーで、
先端になぜかニャロメが描かれていた。
nyarome.jpg

小学1年生の頃から、
毎年春休みに3泊でスキー学校に行き、
6年生の時に3級(パラレルターン)取得。
スキーは自転車と一緒で、
一度滑れるようになってしまえば、
何年後に行っても滑れる。

子供の頃は、
リフトも一人乗り用しかなくゆっくり。
スキーウェアがあまり良い物が無くて、
手袋も靴もびしょびしょに冷たくなって、
本当に寒かった。
今はスキーウェアは軽くて暖かいし、
リフトは速いし、
しかも乗るときはゆっくりになるし、
とても進歩した。
でも、スキー靴が重たいのが気にいらない。
足首が動かないので階段とトイレが大変。
もうちょっと研究開発を頑張って欲しい。

スキー場ではスイスイと上手に滑り、
一度も転ばない私だが、
宿の温泉にてツルッと滑り、
転んでアザを作った。
足の爪2本からも内出血...。
お風呂の縁に大理石を使うのは、
危ないからやめてください。

投稿者 mamiko : 22:17

2005年01月13日

1週間前の心得

美容院へ行き髪を切り、
その足で額の追加注文にユザワヤへ。
転ばないように気をつけて、
ジーパンに運動靴で出かける。
undougutu.jpg

1998年のコルク人形展前。
グッズ販売用の袋などを買いに
浅草橋の包装用品店シモジマに行った。
一人で買うものを探して走り回っていたら、
店の階段から落ちて足首捻挫。
重い荷物と足を引きずりながら最終準備。
展覧会1週間前の出来事。
展覧会中は湿布をして乗り切る。

1999年のコルク人形展前。
珍しく作品は用意できていて余裕あり。
痩せるためという目的で、
友人と区民プールのジムへ行く約束。
自転車に乗り慣れない道を走行中、
細い交差点で軽自動車にはねられる。

自転車は私より遠くに跳んでいた。
当の私は流血もせず、
骨折もせず自力で立ち上がったが、
初めて救急車で運ばれる。
頭を打ったからと救急で運ばれたのに、
ひとけのない病院の廊下で
40分もレントゲンを待たされる。
駆けつけた夫の車に乗り警察へ行き、
痛い足を引きずりながら、
事情聴取というものを初めて経験する。

その日は家に帰ると、
だんだん首が動かなくなり、
右手の親指の付け根が痛くなる。
強打した膝はみるみる倍に腫れ上がり、
紫色の腐った林檎がみたいになった。
これは、展覧会5日前の出来事。

展覧会中はスカートでのおしゃれは諦め、
途中トイレで湿布を貼り替えつつ接客。
毎日車の送り迎え付きで乗り切る。

今度の展覧会では
湿布臭い人だと思われないように
十分注意したい。

投稿者 mamiko : 02:56

2004年11月27日

遊歩道のハスキーヴォイス

夕方、薄暗い遊歩道を歩いていたら
「びゃおん、びゃおん」と、
素敵なハスキーヴォイスで
草木の間から猫に話しかけられた。
本当は「びゃおん」ではないけれど、
うまく文字に表すことができない。
声の主は、しなやかな体型の
ハンサム茶トラ猫だった。
目の下と、ニクタタキ(ヒゲのはえている所)に
うっすら白いポイントあり。
とても愛想がよくすり寄ってきた。
首輪はしていないが、
頭を撫でるととても手触りがいい。

hasuki-tyatora1.jpg

遊歩道は商店街と平行しているので、
片側は商店や飲み屋の裏にあたる。
反対側ものんびりと住宅が建ち並んでいる。
この遊歩道の入口付近にはキジトラ猫が
たくさんいる。
雨が降ると、植木の影や横の軒先で固まって、
雨宿りしている姿を見かける。
このあたりは、人と人の暮らしの間に
ジャマにもならず気ままに猫が共存していて、
バランスよく優しい環境なのだろう。

ハスキーヴォイスの茶トラ君には、
数枚写真を撮らせてもらい
「じゃあね」と別れた。
ちょっとついてきて
しばらく見送ってくれた。

投稿者 mamiko : 01:52

2004年11月25日

誕生日にまつわる話

今年も誕生日が来た。
夫と私の。

生年月日がたまたま一緒だった。
なにかこれで便利なことがあるかと言えば、
憶えやすいというくらいだ。
よく何かの暗証番号に
相手の誕生日を捩ったものを使うが、
そういう手が使えないので、
ちょっと不便だったりする。
クリスマスが誕生日の人は、
プレゼントがまとまってしまいつまらないと
聞いたことがある。
私の場合は、
自分の誕生日だが、プレゼントを用意する。

知り合ったばかりの友人に
2人の誕生日を聞かれたりすると面白い。
たいていの場合、
「え、同じ誕生日なの!運命だねぇ!
じゃあ血液型は?...え、血液型も一緒なのぉ!!」
という反応。
その後、なぜか羨ましそうにされる。
たまに、
「なにそれ、キモチワルーイ!」
という否定的な反応。
その場合は、
「前世で、離ればなれになった双子だったのかも...」
とか言っておく。

国民健康保険証が今年から
一人一枚ずつに変わったので便利になったが、
あれが1世帯で1枚だったときのこと。
2人して別のことで診察を受けに、
近所の病院に行った。
帰りにそれぞれの薬を受け取りに薬局へ。

待っていると、
パソコンにデータを打っていた受付の人が、
「あれっ?これ間違ってますね」と言う。
誕生日が同じになってるから間違いだというのだ。
「あ、一緒なんです」と答えたら、
「あ、ご兄姉ですか」と、納得している。
一緒の家に住み生年月日が同じ=双子の兄妹(姉弟)
ということなのだ。
夫婦は連れ添っていると雰囲気が似るという。
二卵性双子くらいに見えるのかもしれない。
「いえ、夫婦で偶然に一緒なんです...」
悪いことは何一つしていないのに、
妙に気まずい雰囲気になってしまった。

imadojinja-manekineko.jpg
東京浅草・今戸神社の縁結び招き猫。
左のブチ柄の方が雄猫だそう。
この猫達だって同じ誕生日だ。

投稿者 mamiko : 00:29

2004年10月17日

身だしなみ

電車やバスの中でお化粧をする女の子を
見かけるようになったのはいつ頃からだろうか。
人の視線は全く気にせず、堂々とお化粧をする。
よくあんなに大きな鏡を持ち歩くなあと思う。
私は旅行に行くときだって、
あんなに大きい鏡はごめんだ。
すでにキレイにお化粧しているのに、
更に塗りたくる人、
延々前髪の並び方をいじる人。
この人達は、何のために
そんなに鏡を覗き込むのかよくわからない。

揺れる山手線で立ったまま、
眉毛を書き、アイシャドウを塗り、
カーラーでまつげをカールし、
マスカラで仕上げたところで、
降りる駅に到着した強者を見た。
この人は最初素顔だったので、
すっかり別人に変身して降りて行った。
この人に限っては、
パーティードレスを着ていたし、
時間がなく必要に迫られての行動なのだろうが、
すごい技術だと感心してしまった。

一番迷惑だったのは、
地下鉄車内でマニキュアを塗る人だった。
多少混んでいる車内だったのに、
その座席の前だけ半円の隙間が出来ていた。
まず、前の色を落としたのか、
上手くいかなくて塗り直しなのか、
その辺り一帯に除光液のニオイが充満していた。
鼻がツーンとしながら、
呆気にとられて見ていた。

猫は暇さえあれば、身だしなみを整える。
誰のためでもなく、自分のために。

totoko-asiname.jpg

投稿者 mamiko : 00:46

2004年10月08日

金木犀の香り

区民プールに泳ぎに行った帰り、
西日の差し込むバスに揺られていた。
途中の駅から、小学校低学年くらいの兄弟と、
そのお母さんが少し離れた席に座った。
お揃いのジージャンを着ていて、
すごく可愛い。
お母さんは上品な服装で、
知性を感じさせる綺麗な人だ。

静かなバスの車内に、
兄弟のお兄ちゃんの方が
お母さんに話しかける声が響く。
「あの花、なんていう名前?」
窓の外を指差しているが、
走っているバスからでは
そんなに正確に指させない。

「あのオレンジ色のちっちゃい花」
「十字みたいな形で、いい匂いがするの」

ああ、わかった。
金木犀だ。
今咲いているもんね。
次々に明確な特徴を言えて、
この子、頭いいな。

ところが、
お母さんはなかなか答えてくれない。
「ねえねえ、なんていう名前?」
男の子は興味津々のクリクリした目で訊く。
バスの放送が流れる。
「次は、ユリの木公園です」
お母さんは仕方なく答えた。
「ここは“ユリの木公園”だから、ユリの木よ」

そんなぁ!
明らかに金木犀なのに。
確かに窓の横の遊歩道には、
ユリの木が並んでいる。
けれど、葉が少し黄色くなりかけていた。
花なんて咲いていない。
このお母さんは、金木犀を知らないのか、
それとも特徴を聴いていなかったのか。
わからないなら「わからない」と言わないと。

今年も金木犀の香りが漂い始めた。
ふとこの良い香りと一緒に、
去年のバスの中の記憶が蘇った。
私の脳の引き出しには、
金木犀と西日のバス車内の歯がゆい思いが、
セットでインプットされているらしい。

kinmokusei8.jpg

投稿者 mamiko : 01:03

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